緑色のシートが示した赤きサポーターの思い[コラム]

浦和レッズのサポーターが話し合いを始めたのはキックオフの3、4時間前だったという。8月15日の埼玉スタジアムでは、昨年のルヴァンカップ優勝チームである浦和レッズと、同じく昨年のコパ・スダメリカーナの王者であるシャペコエンセ(ブラジル)によるタイトルマッチが予定されていた。

シャペコは昨年11月、コパ・スダメリカーナ決勝戦が行われるコロンビアに向かう途中にチャーター機が墜落し、元Jリーガーら70名を超える死傷者が出る大惨事に見舞われ、主力選手の大半が命を落とした。今大会はクラブ、チームが絶望と悲しみを乗り越えて実現した特別な一戦だった。

「サッカーチームのサポーターとして、サッカーを愛する仲間として、何か力になりたい」

自然発生的に沸き上がった純粋な思いから、浦和サポーターたちは何か月も前から意見をすり合わせ、関係機関を通じて準備を重ねてきた。当初は「スタジアム全体をシャペコカラーの緑色で染めてはどうか」という意見も出た。「赤白黒」にこだわってきた彼らが示す最大限の思いだった。しかし、日本協会を通じて浦和レッズと浦和サポーターに伝えられたシャペコのスタンスは、あくまで「タイトルマッチ」。親善マッチ的な演出はふさわしくないということで、最終的には緑色のビジュアルシートを1万枚つくることになった。

試合当日、浦和サポーターが最後まで話し合いを続けたのは、シートの使い方だった。シャペコの意向を最優先としつつ、サッカーを愛する仲間としての純粋な思いを伝えるには、どのタイミングでどのような形で掲出するのが良いのか。最終決定を下したのはキックオフ1時間前だった。

試合は両者ともタイトルマッチにふさわしい激しさとクオリティーの高さを見せ、膠着した流れが続いたが、後半アディショナルタイムに得たPK決めた浦和が1‐0で勝利を収めた。亡くなったメンバーたちが獲得したタイトルへの挑戦権。今大会に懸ける思いの強かったシャペコの選手たちは感情を露わにし、ピッチは荒れたムードに包まれた。

すべてを一転させたのはゴール裏で掲出された緑色のシートだった。こみ上げるものを抑えられないシャペコの選手たちがいた。「世界の舞台でもう一度会おう」というポルトガル語の横断幕が高らかに思いを伝えていた。

思いは地球の裏側まで届く。地球の裏側の人々と思いを共有できる。それがサッカーだ。あの夜、埼玉スタジアムが世界に示したのは、勝者はサッカーであるということだった。

(矢内由美子/REDS TOMORROW編集長)

No.246 REDS TOMORROW/2017年9月22日(金)発行 より転載

REDS TOMORROW

<発行エリア>

埼玉県全域(一部地域を除く)

<発行部数>

約38万部(Jリーグ・リーグ戦ホームゲーム前日の朝日新聞朝刊に折込)

<発行対象試合>

Jリーグ・リーグ戦ホームゲーム全試合他

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